映画「ゴジラ」や、ミュージカルなどで知られる俳優宝田明(たからだ・あきら)さんが急逝したことが17日、分かった。87歳。1953年に芸能界入りして以来、さまざまな作品に出演した。今月10日には、映画「世の中にたえて桜のなかりせば」(三宅伸行監督、4月1日公開)の完成披露舞台あいさつに出席し、映画制作への飽くなき意欲を明かしていたばかりだった。

宝田さんは今月10日の舞台あいさつで、車いすに乗って登壇した。「腰痛をずっと患っておりまして、ここのところ痛みが激しくなりまして。まずはこの非礼をまずお許しくださればと思います」と説明していた。複数の関係者によると近年、入退院を繰り返していたという。今月13日に容体が急変し、同日深夜から14日の未明ごろに亡くなったという情報もある。

53年東宝ニューフェイス6期生として芸能界入り。当時日本人離れした180センチの長身と甘いマスクで人気になり、「ゴジラ」(54年)に初主演した。ミュージカルスターの草分けとしても知られ、19年のミュージカルコメディー映画「ダンスウィズミー」ではマジシャン、催眠術師を演じ、55年ぶりにスクリーンで歌い、踊りを披露した。同作の撮影では、自らステップのアイデアをしてみせるなど元気いっぱいだった。関係者によると、散歩なども日常的にしていたという。

父は技師で、朝鮮総督府鉄道、南満州鉄道に勤務した。終戦後、ハルビン市から引き揚げてきた経験もあることから戦争反対の思いを常々語ってきた。16年7月の参院選比例代表に政治団体「国民怒りの声」から立候補する意向を示したことがあったが、その後取りやめた。それでも「改憲にストップをかけたい。戦争に加担する国にしてしまったことに怒りを持っている」などと主張した。

遺作となった「世の中にたえて桜のなかりせば」では約70歳差の乃木坂46岩本蓮加(18)とダブル主演。今月10日の舞台あいさつでは「大女優の片りんを見た。大変な小娘でございます」と岩本を絶賛した。ロシアのウクライナ侵攻に言及し「この現実を見た時に、もっと社会性を持った映画を作らなきゃいけないと思っています」とし、「蓮加さんとも来年もう1本仕事がしたいな、っていう気持ちでいます。ぜひご期待ください」と誓っていた。

◆宝田明(たからだ・あきら)1934年(昭9)4月29日生まれ。第6期東宝ニューフェイスとして、54年映画「かくて自由の鐘は鳴る」でデビュー。代表作は「ゴジラ」「青い山脈」など。音楽映画は「ロマンス娘」「太陽を抱け」など。64年舞台「アニーよ銃をとれ」で、ブロードウェーミュージカルに出演、以後「サウンド・オブ・ミュージック」「風と共に去りぬ」「マイ・フェア・レディ」など多くの名作に出演。66年、日本人初のミス・ユニバースである児島明子と結婚、84年に離婚。長女は歌手の児島未散。