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嵐対決 最後は日テレに軍配~『VS嵐』『嵐にしやがれ』の小さくて大きな差~(鈴木祐司) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

『VS嵐』と『嵐にしやがれ』が、最終回は共に4時間スペシャルで幕を閉じた。

スイッチ・メディア・ラボの調べでは、個人視聴率は9.2%対10.8%。

トップアイドルグループによる冠番組のラストらしく、いずれも高い数字となった。ただし各4時間の見られ方を追うと、両番組には小さくて大きな差があったことがわかる。

データから浮かび上がるフジテレビと日本テレビのバラエティ手法を考えてみた。

両番組の接触率推移

先に放送されたのは、フジ『VS嵐』。

東芝視聴データ「TimeOn Analytics」によれば、8%ほどで始まり、78分で15.73%と倍近くまで急伸した。

嵐の求心力を示す波形と言えよう。

ところがピークを過ぎると、急落が始まった。

番組終盤までに6%近くを失ってしまう。しかもほぼ右肩下がりが続いていたのである。明らかに途中で飽きて番組から離れた人が少なくない。

一方『嵐にしやがれ』は、11.34%で始まり、最初の1時間で5%ほど上げた。

その後も数字を落とすことなく続き、ラスト90分で再び上昇した。

離脱が少なく、途中から見始めた人を貯めて数字が大きく膨らんでいたのである。

ヤフーリアルタイム検索によると、最終日のツイート数は『VS嵐』が7.5万、『嵐にしやがれ』が7.3万。

共に高い視聴率かつ話題となる番組で僅差だった。ところが番組を見続けた人の数では、大きな差が出来てしまった。

男女年層別の個人視聴率

誰が番組を見たのかを、再びスイッチ・メディア・ラボのデータで検証してみよう。

全ての年齢層でよく見られていたが、両番組を比較すると、『VS嵐』はT層(男女13~19歳)で上回った。ただし他の層では、すべて『嵐にしやがれ』が上だった。

80~90年代、12年連続三冠王の偉業を達成したフジは、「F1のフジ」とも言われていた。

ところが嵐の冠番組では、FTでこそ上だったが、F1(女性20~34歳)では日テレにお株を奪われる形になっていた。

さらに『嵐にしやがれ』は、M1~M3-(男性20~64歳)で『VS嵐』を圧倒した。

男性アイドルなのに、女性ファンだけでなく、男性に支持される番組だったのである。

バラエティの付加価値

ビデオリサーチの調査によれば、バラエティ番組を見る理由には、「暇つぶし」「慰安」などが上位に来る。

ところが『嵐にしやがれ』の視聴者層を属性別に分析すると、それ以外の付加価値に吸い寄せられている人々がいると推察される。

例えば世帯年収で両番組を比較してみよう。

『VS嵐』は収入の多寡で、視聴率が変化することがほとんどない。ところが『嵐にしやがれ』は、年収とともに視聴率が徐々に上がっている。

次にサラリーマンの役職との関係を見てみよう。

やはり『VS嵐』は、役職では視聴率は変化しない。ところが『嵐にしやがれ』では、一般社員より主任係長クラス、さらに部課長クラスと視聴率が上がっていく。

どうやら単に“楽しい・おもしろい”だけでない要素が、『嵐にしやがれ』にはありそうだ

コアターゲットの個人視聴率

テレビ局は近年、広告主のニーズに応えるべく、若年層をターゲットとした番組作りに傾注している。

日テレは「コアターゲット」と呼ぶ男女13~49歳を重視している。実はフジも同世代をターゲットとしているが、「コア特性」と名称を変えている。

この層と全年齢層との比較で、両番組の視聴者特性を比べてみよう。

男女ではフジが女性を比較的多く集め、日テレは男性で上回った。

次に関心領域を比べると、「芸能人・バラエティ」や「ドラマ・映画」では、ほとんど差がなかった。ところが「社会」「経済・ビジネス」「政治」となると、『嵐にしやがれ』はこの領域でコアターゲットにアプローチできていることがわかる。

世帯年収や会社における役職の違いでの個人視聴率の多寡と、関心領域での違いはどうやら相関関係がありそうだ。

番組コンセプトと作りの差

『VS嵐』は、ゲームバラエティ。

企画と総合演出の担当者は、もともとスポーツや音楽を担当しており、ゲームという発想も瞬間的に出演者の素が出る領域という意味で通底している。

一方『嵐にしやがれ』は、台本や予定調和なしのバラエティ。

5人一緒のスタジオ収録の他に、個別メンバーによるスタジオ収録やロケなどで構成される。

企画と演出の担当者は、駆け出しの頃に『電波少年』でドキュメントバラエティに出会い、その経験を活かし2000年代半ばに『イッテQ』へ応用した。その延長線上に『嵐にしやがれ』がある。

フジは80年代、お笑いビッグ3(たけし・タモリ・さんま)など、数字のとれるタレントの瞬間芸を活かした番組で、12年連続三冠王など破竹の勢いで民放のトップに躍り出た。

ところが有名タレントのブッキングで苦戦した日テレは、企画力勝負のバラエティでやがてフジを逆転する。

『VS嵐』と『嵐にしやがれ』は、こうした両局の歴史とDNAの違いを反映する番組だ。

前者は原則、嵐5人をスタジオに集めて一発で撮る。勢い重視の効率の良い番組と言えよう。

ところが後者は、嵐として投入する時間は長くなる。それでも企画により各メンバーの個性が引き出され、チームに奥行を出させていた。

かつて日テレの幹部は、「嵐という素材は同じでも、制作者が傾ける熱量が違う。当然おもしろさの色合いが異なり、多様な視聴者に支持されている。結果として飽きないものとなっている」と筆者に語っていた。

両番組は放送の曜日も時間帯も異なるので、単純に比較はできなかった。

それでも最終回は、ともに4時間スペシャルで、時間帯も同じだった。グループ活動休止直前のレギュラー番組最終回ということで、共に高視聴率で、その差は小さく見えた。

ところが4時間の“途中失速”と“右肩上がり”を見ると、やはり両局の過去10年の勢いの差を感じざるを得ない。

来年1月からは、相葉雅之司会による『VS魂』が始まる。

基本コンセプトを同じにするゲームバラエティと発表されているが、今回の両番組最終回の差に学び、ぜひ多様な視聴者を呼び込む工夫が望まれる。

フジは今、明らかに復調の兆しが出てきている。

現在のトップである日テレの良いところを盗み、『VS魂』で新たな境地を切り開くことに期待したい。

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